B-STYLE

[身近なモノの取合せで暮らしを満喫する]  [時の経つのを楽しむ] [偶然を味方にする] それらをBスタイルと呼ぶことにしました。

2012/11/18

映画「ガタカ」Gattaca -未来デザインとは永遠に訪れない理想-


将来、遺伝子操作により"優秀な人類"が作れたとしても出来無い事がある。それは夢を持ったり、自分を信じたりすることである。また"優秀な人類"にも苦悩は必ずある。そして偶然の事故はさけることはできない、というのがテーマ。
SFながら特撮を使わず素晴らしい未来世界を描いている映画。アンドリュー・ニコル監督の傑作。


■ストーリー:
近未来、遺伝子操作により優秀で肉体的ハンディキャップのない子供をが生まれる様になっていた。主人公ヴィンセントは、この操作なしに生まれてきたため「不適正者」としてコンプレックスを持っていた。

しかしある時、遠泳で「適正者」の弟に勝つことにより、コンプレックスは克服される。自信を持ったヴィンセントは、"宇宙に行きたい"という少年時代の夢を実現するために家を出る。だが宇宙局「ガタカ」で飛行士訓練を受けられるのは「適正者」だけだった。

ヴィンセントは、宇宙飛行士にになるため、偽装仲介人をとおして元水泳銀メダリスト、ジェロームと出会う。そして彼に成りすます技術を身に付け「ガタカ」に入る。

しかし偽装を続けているうちに、街で殺人があり現場には「不適正者」の睫毛が残されていたという事件が起こる。「ガタカ」の検査も厳しくなり、危うく正体を知られそうになるが、直前に真犯人は逮捕される。

ヴィンセントはジェロームになりすまして宇宙飛行士試験に合格する。木星に出発するロケット。宇宙局には、彼がジェロームではないと知りつつ見守る検査官や恋人がいた。

映画は、主人公が、すでに宇宙飛行士になっているところから始まり、一人称の回想シーンを挟みながら、殺人事件に遭遇するところからリアルタイムになっている。 

■ストーリーのポイント:
・主人公は、両親がリビエラという名の車の中でセックスして生まれた。(開放感の暗示)
・弟に勝ち、コンプレックスから解放され家を出る。(家という価値観の終焉と旅立)
・未来社会では、遺伝子判定が重要で、顔や写真は重視されない。そのためか同じ職場にいる弟も気づかない。(通常知覚の欠落)
・偽るということに対して主人公は、それほど後ろめたさを持たない。(社会より神への信頼)

■デザイン:
1. オープニング
白い画面に上から何かが落ちてきて積もる。サイズが分からず、何のことやらと思うが、ストーリーが始まると人間の皮膚の回りにあり遺伝子に関連する物、つまり髪の毛、爪、体毛などであったことがわかる。キャスト名の出方も凝っている。

2. ロケ
近未来を象徴する建物、それが宇宙局「ガタカ」だ。ロケ地はフランク・ロイド・ライトが1957年に設計したカリフォルニア州サンフランシスコ近郊にあるマリン郡庁舎。他にも「プレードランナー」などとは違うモダンで、すっきりとした建造物ばかりが登場する。それらは、むしろ古代的にさえ感じられる。

カメラが動き回るようなシーンがないので、意図的にアングルを選んで撮影したのだと思う。また外のシーンではフィルタを使い「バグダッドカフェ」の様な雰囲気もかもし出している。

3. セット
いくつかのセットが作られている。研修室のセットは、すっきりしてここちよい。モニタを配備した机となるとどうしても重たくなってしまうものだ(「ファイナルファンタジー8」)。キーボードの大げさすぎない曲線も良い。キーの黒色は、「ロッキー4」のロシアンボクサーのマウスピースを連想させる不気味さがある(Macも黒になってしまったが)。

ジェロームの部屋もセットだろう。螺旋階段が特徴。ここにある偽装のための小道具類もリアリティがあり、主人公の正体を隠そうとする不安などを表現する大事な役割を果たしている。

4. ファッション
2人はいつもスーツ、ネクタイ姿で暮らしている。古い映画のファッションのようだが、これがストーリーとうまくあっている。スーツというのは、個性を否定する小道具でもある。そういえば、この映画に登場する車も古い物ばかりだ。この古さと未来がうまく調和するという現象は、人間の未来に対するイメージには、法則があるのではないかと思ってしまう。

5. 流線型
流線型のロケットが活躍するSF映画は、「スタートレック」で終わってしまったかのように思える。宇宙空間では大気や重力は存在しないので、衛星や探査機のデザインは、メカニカルになってしまった。だがそんな合理性だけのリアリズムが未来のデザインなのだろうか。

古い流線型の車に未来を想像してしまうのは、私だけではないだろう。あるいは表現の中の未来というものは、永遠に訪れない理想の世界であるべきだ、とは言えないだろうか。1920年頃から1950年頃までのデザイナー達が思い描いた未来像には、そんな夢が存在した様な気がする。だから古いデザインはSFにマッチするのだと・・。
車は、1971年モデルのリヴィエラと、もっと古いシトロエンDS。

■おすすめのシーン:
・海藻の海で弟と競泳するシーン。
・ヴィンセントとジェロームがバーにゆき、ヴィンセントがグラスにタバコの煙を注いで木星に例えるシーン。
・ヴィンセントと恋人の海岸でのラブシーン。カメラワークがおすすめ。コクトーの映画「美女と野獣」のラストシーンを彷彿させる。



アンドリュー・ニコル監督の作品

映画「TIME/タイム」(In Time)

ザ・ホスト 美しき侵略者