造形性と物語性

作家によって作られた美術作品やデザインには造形的、空間的な魅力があります。これが造形性にあたるわけですが、すべての美術作品が純粋に造形性のみで成り立っているわけではありません。もう一方の性質として物語性や意味性があります。

デザインの世界に入ってから、私はずっと造形性と物語性の間をさまよってきたと思います。特にCGで個人作品を作るようになってからです。ある時は造形性を使って物語を視覚化したいと思い、またある時は造形性によって意味を視覚化するといった具合です。

私は純粋に造形性だけを追求した事はほとんど無いのですが、このような作品も世の中には多数存在します。しかし人は意味の無い作品に対しても意味を求めるのです。意味が加えられると造形物は別のものになります。こうして私の作品は象徴的な方向へと変化して来たのだろうと思います。もっとも意味は鑑賞者がそれぞれの場所から想像するので結果もずれる事になります。

（望月澄人作品展　小春堂　「作品とエピソード」より）