B-STYLE

[身近なモノの取合せで暮らしを満喫する]  [時の経つのを楽しむ] [偶然を味方にする] それらをBスタイルと呼ぶことにしました。

2014/05/15

ギーガーの記憶

ギーガーが亡くなった。

私がギーガーを知ったのは、20代の頃だったと思う。
ギーガーは先端芸術やアカデミズムなどとは無縁の作家である。死を予感した肉体が物質化する快感を妄想し続ける作家である。その恐ろしさは一度見たら忘れられない。しかも強いスタイルを持っている。だから映画「エイリアン」の宇宙船、特に砲手を見た時、これってもしやギーガー? と思った記憶がある。

もう一つ、これは記憶が定かじゃないけど、角川映画「汚れた英雄」で背景の壁にギーガーの巨大画が使われていたような・・。
手前はプールだったような・・シーンのあった記憶がある。
間違っていたら申し訳ないが、こういうケレン味のあるセットは好きだ。

本物を見たのは渋谷のシード・ホール。「H・R・ギーガー展」。初めての本物! と期待。
しかしギーガーの絵は緻密で、しかもエアブラシ。印刷物を見るのと変わらなくて肩すかしを食ったような気分に・・。
たぶん私は原画にしかないギーガーの痕跡を見たかったのだ。気合を入れ過ぎてしまった。

次は白金台のギーガー・バー。
よくこんなものを思いつく日本人がいるものだと感心した。内装、調度品はすべてギーガー風。暗いせいもあって、ディズニーランドくらいのクオリティーは感じる。

天井は吹き抜けのような高さがあり空間は気に入ったが、柱や鴨居にアスベストが吹きつけられていて、なんとなく気持ち悪い。
時々どこからかドライアイスの白煙がでる。ワインを飲み、黒いソースのかかったパスタを食べる。ワインのラベルとコースターはギーガーの絵が印刷されていたので、お上りさんのように頂いて帰る。

当時、この店の評価に「なぜ映画のセットで酒を飲まなきゃいけないのか。」というのがあったが、まあ店全体が土産話づくりに一役かっていると思えばいい。
最近まで、映画「エイリアン」は6枚組DVDを持っていた。そのうち2枚はメーキングで、苦労話がタップリと味わえる。「エイリアン」誕生までには観客の想像以上の苦難があった。そこにはギーガーも登場し精力的に働いている。

この度、ギーガーの訃報を知って思い出したのは、この姿だった。

学生時代、ヨーロッパに行った知人から「ベルメールは、鳥のように覗かれるのを嫌がって人と逢おうとしない。ギーガーは病んでいる。」と聞いたことがある。しかしこのメーキングに登場するギーガーは違っていた。そこにいたのは実に行動的な作家であり頼りになるデザイナーだった。
一般的に退廃的な作品を作る作家は退廃的な生活を送っているように思えるものだ。しかしそれでは作品制作のような重労働はできない。
ギーガー然りである。

あらためてギーガーのご冥福をお祈りしたい。

そうだ、忘れていた。ギーガーに関するものといえば、PSのゲーム「ダークシード」と「ダークシード2」を持っていたんだった。ゲームの良し悪しは別として。

PSゲーム「ダークシード」:ギャガ・コミュニケーションズ