B-STYLE

[身近なモノの取合せで暮らしを満喫する]  [時の経つのを楽しむ] [偶然を味方にする] それらをBスタイルと呼ぶことにしました。

2012/07/30

小春堂

札幌市南区にある小春堂は興味深い店です。小さな店の中に5つもの異なった空間があります。
1つ目の空間は、店を入ってすぐ右隣の2組のテーブルと椅子のある空間です。窓からは自然光が入り、外が見えます。外を意識しながら時間を過ごします。煙草が吸えれば一番好きな場所なのですが。
2つ目の空間は、カウンター。珍しい曲線が特徴的です。初めてここに座る時は思わずニヤッとしてしまいます。しばらくすると離れた所に座る相手の顔が見やすい事がわかります。カウンターの後の通路は狭いのですが、それが奥の空間を想像させてくれます。
3つ目の空間は薪ストーブのある落着いた空間。山小屋風とでもいいましょうか。座席はソファー。そこでは外界の事を忘れてゆったりと時を過ごします。自分の世界にひたれるのです。ここも狭いですが隣の茶室風の和室とつながっていて、茶室を景色として眺めながら過ごせます。また反対側には中庭が見え、小さな自然を楽しむ事が出来ます。
4つ目の空間は茶室風の和室。ここに入るには靴を脱いでにじり口から入る方法と、山小屋風の部屋から段差のある畳の上に進む方法があります。正座やあぐらで長く過ごす事が苦手な私はここの印象をうまく語れないのですが、お洒落な床の間がポイントです。ここからは山小屋風の部屋を通して中庭を眺める事が出来ます。
5つ目の空間は小さな中庭。特別な安らぎのある空間ではありませんが、何よりも緑があります。私のように閉ざされた場所が苦手な人間にとってはここが一番居心地の良いところとなります。大きなテーブル、丸太を切った椅子。壁に囲まれていますが空が見え、雨の日も軒下にいれば風情があります。ここに居ると埼玉の釣堀「朝霞ガーデン」の事を思い出したりします。釣堀から離れたところに寂れた水路がありました。そこでただ1人釣糸を垂れている釣人がいたのです。ろくに魚がいない事を知りながら1日4500円も払って枯れた葦の中で過ごす贅沢な男でした。

1つの店に5つもの異なった空間があるのは、欲張りのように見えますが、小春堂はマスター高橋さんの手作りの店です。彼はこれまで何軒もの建物を手がけているデザイナーです。ここは彼のプレゼンテーションの場なのかもしれません。だからこの一見コラージュのような店には、異なった空間を結びつける緻密な計算がされているのだと思います。
また店にある手作りの木の椅子は、木工職人の手によるようなヌルっとしてきめ細やかな仕上がりではなく、むしろ子供の夏休みの工作のように角材のままになっています。それらはチープで豊かなたたずまい(笑)とともに訪れる人々を和ませています。

望月澄人作品展 ー小さな額縁の中の大きな世界ー

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