ベッドで横になってボーッとしていたら、視界の中で何か動いているものがある。
病院の屋上のあたりで、見え隠れしている小さなものだ。
人の体の一部? 最初は誰かがこちらを見ているのかと思った。でも私のようなおじいちゃんの行動を覗いてもなんの楽しみもない。だいたいあの位置から見えるのは男性病棟だけだ。
動きは不規則。こちらに呼応しているようにも見えない。
「変なものが見えるんだけど。あそこは屋上? 人は行けるの?」と、清掃員に聞いてみた。
「いや、ふつうは行けないけど、な〜んだろうね」
「もしかしてヘリポートなんてある?」
「あるよ。だから結構うるさい時もあるんだよ」
わかった! あの物体、動きからすると、風向計か風力計に違いない。設置場所の関係で、風が吹くと、その一部が見えたり見えなかったりしているのだ。
Google mapの航空写真でみると確かにヘリポートがある。
装置は見えないが、多分こんなものだろう。
風向風力計(Google検索より)
ほとんどの患者がこんなものには気付かずにすごしている。
夕方になって、この装置のとなりにカラスがやってきた。じっとして動かない。
カラスはこの装置をどう思っているのだろう。